21世紀塾第23回提言


森協ネットグループの21世紀塾代表世話人小野 徹氏から第23回提言が送られて来ましたのでご紹介させていただきます。

平成20年(2008年)1月23日 第205回『21世紀塾』参考資料 (第23回提言)

「雨降り歓迎ネットワークの構築を」  『21世紀塾』代表世話人 小野 徹

【問題提起】
 21年3月に、富士山静岡空港が開港する。
 名前は「富士山静岡空港」と付けられていても、まごまごすれば「富士山山梨空港」になりかねない、と指摘されている。
 特に、この県東部・伊豆においては、行政から市井のオピニオン・リーダーに至るまで、本来、地域振興の「手段」でしかない市・町の合併組み合わせ論ばかりが取り沙汰されていて、肝心の静岡空港開港時に、どうしたら東部・伊豆に外国人旅行者を呼び寄せられるか、楽しんでもらえるか、金を落としてもらえるか、その為の地域の特色を作り出せるか、の議論が高まっていない。
 象徴的なのが、この「富士山」という言葉だ。



 空港名に「富士山」という世界のビッグネームを冠したのは良いとしても、実は、富士山は一年の三分の一しか見えない、という厳然たる事実がある。
 つまり、富士山を楽しみに当地を訪れる客の期待を、しょっ中裏切ることになるのだ。

 さらに言えば、「見えない」どころか、雨の日も多くて、それでは「それに対してどうするのか」の手立ては、何も聞こえてこない。
 「雨は、自然現象だから、しょうがない。ごめんね」で済ますのでは、静岡空港をテコに「日本一の観光・産業立県」を目指すにしてはお粗末だし、「雨で景色も見えないから、一刻も早く旅館へ」の体たらくでは、日本一の観光地を自負する県東部・伊豆の名が泣く。

◇ ◇ ◇  ところで、かつて京都・大原の三千院を訪れた時、そこの坊さんが、「雨の寂光院、雪の三千院」と、いかにも三千院の方が優れているかのような言い方をしていて、「うまいことを言うなァ」と感心していたものだが、今頃になってハッとすることがある。





 それは、確かに「雪の三千院」は見事かもしれないが、雪は一年中降るわけではない。一方、「雨の寂光院」は、年がら年中、季節を問わず、雨が降るたびに映えるということではないか、ということに気付いたからだ。
 これに習えば、三千院の雪、つまりわれわれにとっての快晴の富士は、望ましい最高のシチュエーションであるが、逆に言えば、そうでない日、つまり曇りや雨の日、特に雨の日には、雨をハンデとすることなく、むしろ「雨降り歓迎」の知恵を働かせ、おもてなし術を考えていかなければならないということだ。
 例えば、わが三島なら、「雨なら、こちらへ」という場所がある。
 --それは、三島の誇る「せせらぎの水辺」だ。
 源兵衛川、桜川、御殿川、四の宮川、宮さんの川、といった水辺や、水辺を活かした楽寿園、白滝公園、水の苑緑地、こも池公園、佐野美術館といった庭園だ。
 そこに、かっての三島の名物だった「和傘」を持って散策してもらう。
 街なかの「せせらぎの水辺」や公園なら、風も強くないし、水辺の小径は、もともと散策にはぴったりの場所だから、一人でも、二人の合々傘でも似合うし、絵にも、写真にもなる。
 しかし、そうは言っても、雨で足元が悪いのは道理だし、雨に濡れることを厭う人の為には、さまざまな工夫も必要だろう。
 例えば、和傘だけでなく、軽い蛇の目傘も要るだろう。



 長靴を貸したり、ゲタに使われる「爪皮」のように、靴の上からビニールをかぶせる方法もあるし、首からスッポリかぶるビニールカッパ方式なども考えられる。
 より風情のある庭づくりや、歩道を歩きやすく整備するなどというのは最低条件だが、歩いた後、靴や衣服を乾かしたり、温まったり、温かい湯茶でねぎらう施設なども欲しい。
 さらには、冷え切った体を、もっとシンから暖めて欲しい人には、アルコールや、人肌?などの対策も講じなければならない。
 ハンデ克服には、そうした知恵や、工夫がいるのだ。
 ◇ ◇ ◇
 当然の事ながら、屋根のある室内をフル活用する手もある。
 本来なら、熱海や伊豆長岡に「カジノ」があれば良いのだが、許認可されるのを待ってはいられないので、古くから日本の代名詞とされてきた、「ふじやま」「芸者」の一方を活かして、一刻も早く歌舞練場の「華の舞」などにお連れするとか、「庭に韮山竹を配置した、『雨を見せる』こういう旅館がある」とか言って早めにしけこむとか、無難に、熱海、伊豆高原、箱根の美術館・博物館をハシゴするという手もあるし、ぐっとお固く、三島の龍澤寺で座禅を組むといったことも可能だ。
 また、今は無くても、これを機会に整備することも考えられる。
 雨で見えない筈の富士山を、いかにも見えたような気持ちにさせるグラフィック技術を生かした映像館を作るなどということは、地域としての当然の責務だし、箱根の山中城あたりに、箱根の石畳や茶屋を再現した箱根旧街道の歴史を擬似体験できる「新接待茶屋」も欲しいし、三島の夏祭りで賑やかに奏でられるシャギリの音に酔いしれる「シャギリ会館」があっても良い。
 さらには、函南町のオラッチェで乳を搾り、即席で自分で作ったチーズをつまみに地ビールを飲む、などという体験ツァーも考えられる。
 要は、「雨なら、こちらへ」の話題性と、特色ある街づくりなのだ。
 ◇ ◇ ◇
国土交通省沼津河川国道事務所発行の「if」新春号を見て驚いた。



 「if」とは、伊豆と富士の未来をひらく意味からその頭文字を取ったいうことで、管内の様々な取り組みが紹介されていて、なるほどと勉強になるのだが、この1面に各地の「イベントガイド」が載せられていた。
 新春号なので、1月から3月までの、各地のイベント開催日のお知らせだが、開催地の中から「三島市」を拾ってみると、5つのイベントのうち、4つが「田祭」「奉射祭」等の三嶋大社関連行事で、その他には2月に「地口行灯」があるだけだ。
 他に、何もないのだろうか?
 驚いて「函南町」を拾ってみると、--何と一つも出ていない。
 上段に「詳しくは、各市町の観光協会へ直接お問い合わせを」と書いてあって、ご丁寧にも最下段には各市町の観光協会名と電話番号が記されているので、「if」の編集者は各市町の観光協会からの情報を、そのまま書き写しただけだなとの想像 ができる。
 それにしても、主要テーマ外?とはいえ、情報収集力の不足を感じるが、どちらかと言えば、各市町の観光協会からの情報発信力が、あまりにも弱すぎる結果だとも言えよう。
 「富士山静岡空港」の開港を控えて、県内外ばかりか、外国人にも多くの情報を発信していかなければならない時に、これでは本当に心もとない。
 わが県東部・伊豆としては、月別の「イベント・見どころ」を、盛りだくさんに発信するのは勿論のこと、「晴れてよし、雨でよし」の、文字通り日本一の観光地であるためにも、地域内で、できる限り「雨降り歓迎」の「イベント・見どころ」を捜し出し、無ければ新たに創り出し、それらをがっちりと結ぶネットワークを構築していこうではないか。

 --今なら、まだ間に合う。


トップページへ  21世紀塾紹介ページへ