モデルフォレストと名付けられた地域協働運動(活動)は、地球サミットが開催された1992年にカナダで始まりました。
この活動の原点は、ある地域に住んでいる人達は、そこに存在している森を共有していると考えることにあります。
皆が共有する大切な森ですから、皆で、つまり地域ぐるみで森を支える活動を行おうということです。
もう少しモデルフォレスト活動について具体的に考えてみましょう。
活動は二つの柱から成り立ちます。二つとは、ネットワークとパートナーシップです。ネットワークを形成するのは利害関係者(ステークホルダー)ということになりますが、従来の森林管理の方法と一番異なるのは、ステークホルダーの範囲を大幅に広げて活動を展開することにあります。
地域と森林を共有するという考え方を基本に、地域総ぐるみ(地域協働)の森林(環境問題を含む)持続活動を展開するということです。
このためには、産・官・学・NGO・住民市民の横断的連携が有効です。
基本的には、その地域のなかにある企業も大学も学校もすべてステークホルダーですが、ここで考えていただきたいことは、一見森林に関係なさそうな企業、 例えば自動車産業や家電産業でも水も紙も使います。また大学も森林関係の学科がなくても、バイオマスエネルギーや動物学、生態学の研究など森林とは多く の関係があります。
したがって皆、立派なステークホルダーということになると思います。
そこで、その地域で森林を巡って解決したい課題、立ち向かうべき課題があるはずですから、解決のための目標に向かって活動するようにするのです。
森林を巡る課題はいろいろあるわけですが、わが国で良くみられる問題は森林所有者が高齢化したり、転居したりして森林が管理出来なくなり森が荒れてきている場合が増えたり、シカなどが植えた木に被害を与えたり、クマが里山に出てきて困るとか、人工林では間伐をする時期になっているのに間伐材を使ってくれ る人が少なく、もしこれをエネルギーにかえて石油の消費量を減らすことができれば良いとか、教育の場として森を活用できないかとか、そのほか松食い虫被害 の撲滅とか、さらには花粉飛散の発生源地域と飛来地域の協働活動とか沢山あると思われます。
そこで先ず、関係者、つまり企業、行政、大学、ボランティアグループなどが、意見交換、情報交換などのネットワークをつくります。
つぎに、必要なプロジェクトを決めることになるということになるでしょう。 その場合、例えば地域の水質調査、川魚の棲息調査、クマなどの行動調査、里山の復活、地域材の活用策、子どものための森づくりなどを実行しようということになりますと、今までは森林問題といえば、国とか、県などの行政部門と森林・林業関係者及び一部のNGOが連携して実行することが多かったと思われますが、モデルフォレスト活動では、行政も運営面での支援などいろいろ役割を果たしますが、パートナーシップによる活動が主役として登場して来ます。例えばクマの行動調査に対し、ある企業が資金を提供し、これと大学や専門家が連携して調査を実行するということになります。
このような、本格的なモデルフォレスト運動は、日本では、京都モデルフォレストがはじめてのケースとなります。
世界では、発祥の地のカナダで11個所のモデルフォレスト活動が展開されているほか、各国合計で30個所ほどが名乗りをあげており、国際ネットワークに加入することによって、モデルフォレスト相互の国際交流も可能になります。未来社会に必要な人材育成のためにも大学の交流や学生の国際交流が期待されます。
このようにモデルフォレストの協働活動は、世界でも新しい動きでもあり、まだ、あまり知られていませんが、これからは大きな運動となって、森を育て、守り、活かすことで、地球温暖化の防止にも結びついていくことになるでしょう。